土浦ベリルクリニック

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夏の体調不良は熱中症かも?熱中症の症状と注意点について解説!

更新日:2025.7.22
公開日:2025.7.7

日差しと蒸し暑さが続く季節になると、何気ない日常の中にも熱中症のリスクが潜んでいます。屋外はもちろん、室内でさえも、知らず知らずのうちに体に熱がこもり、思わぬ不調を引き起こすことがあります。気づいたときにはすでに手遅れというケースも少なくなく、体調管理の油断が命に関わる事態を招くこともあります。また、気温の高さだけではなく、室温や湿度、体調など、さまざまな条件下で、身体は想像以上に過酷な状況にさらされています。

本記事では、「熱中症の基本」や「熱中症になりやすい人の特徴」について解説します。正しい知識を身につけておくことで、自分自身はもちろん、大切な人の健康も守ることができます。

熱中症の仕組みと発症する背景

熱中症は、体温調節機能が追いつかなくなり、体内に熱がこもって様々な症状を引き起こす病気です。特に、高温多湿な環境下や、暑さに体が慣れていない時期に注意が必要です。

人間の身体には、暑さから身を守るための体温調節機能が備わっています。通常、体温が上昇すると汗をかき、その汗が蒸発することで体内の熱を逃がし、体温を一定に保とうとする働きが起こります。しかし、気温や湿度が高すぎる場合、汗がうまく蒸発せず、体内に熱がこもってしまうことがあります。また、脱水が進行すると汗の量そのものが減少し、放熱が妨げられ、体温がさらに上昇します。こうした一連の流れによって引き起こされるのが熱中症です。体内の水分や電解質のバランスが崩れると、めまいや頭痛、吐き気、筋肉のけいれん、最終的には意識障害にまで至ることもあります。

初期症状に気づくことの重要性

熱中症の初期段階では、立ちくらみやめまい、顔のほてり、頭痛、倦怠感といった比較的軽い症状が見られます。しかし、それらは日常的な体調不良とも似ているため、見逃されることも少なくありません。特に屋内にいる場合や、涼しい場所にいると感じていても、湿度が高く空気の流れが悪い空間では、知らず知らずのうちに体温が上昇していることがあります。反応が鈍い、ぼんやりする、喋り方がおかしいといった精神面の変化も、熱中症の兆候として見逃してはいけません。

熱中症の重症化を防ぐためには

熱中症が疑われる場合は、体を冷やすことが大切です。風通しの良い場所に移動し、衣服を緩め、首や脇の下、太ももの付け根といった太い血管が通る箇所を集中的に冷やすことで、効率的に体温を下げることができます。また、水分補給も重要ですが、水だけを大量に飲むのではなく、ナトリウムなどの電解質を含む飲料を選ぶことで、脱水と電解質の不足を同時に補うことが可能です。

症状が軽快しない場合や、意識障害が見られる場合には、迷わず救急搬送を依頼する必要があります。特に高齢者や乳幼児では、症状の進行が早いため、迅速な対応が求められます。

熱中症になりやすい人の特徴

熱中症は誰にでも起こり得ますが、特に発症リスクが高いのは、体温調節機能や水分保持能力が低下している人です。高齢者は、加齢によってのどの渇きを感じにくくなることや、もともとの水分量が少ないことから、体調の変化に気づきにくくなっています。また、乳幼児は体温調節機能が未発達で、外気温の影響を強く受けるため、ほんの短時間の外出でも危険にさらされる可能性があります。

持病のある方も注意が必要で、糖尿病や心疾患、腎疾患を抱えている場合、水分と電解質のコントロールがうまくできず、熱中症に対する耐性が低くなります。さらに、利尿剤などの薬を服用していると、脱水が進みやすくなるため、自己管理がとても重要です。

冷え性の人こそ注意が必要な理由

「冷え性だから熱中症とは無縁」と考えるのは大きな誤解です。冷え性の方は、皮膚の血流が悪く、汗をかきにくい傾向があります。汗をかかないということは、体内の熱をうまく外に逃がせないということであり、結果として体の深部体温が上昇しやすくなります。特に冷房が効いた室内に長時間いると、発汗の機会が減り、暑い場所に突然移動した際に、体温調節機能が追いつかずに熱中症を引き起こすことがあります。冷えを感じている状態でも、体の内側では熱がこもっている可能性があるため、自覚症状に惑わされず、水分と電解質を意識的に補給することが求められます。

鎮痛薬の使用は慎重に判断すべき

熱中症の際に発熱のような症状が出ることがありますが、これは感染症によるものとは異なり、体温調節が破綻している状態です。解熱鎮痛薬で熱を下げようとしても、効果が期待できないばかりか、むしろ症状を悪化させる可能性があります。

たとえば、ロキソプロフェンやイブプロフェンといったNSAIDs系の薬剤は、腎臓に負担をかけやすく、脱水状態の体にとってはリスクが高まります。アセトアミノフェンも比較的安全とされますが、それでも熱中症の根本的な解決にはつながりません。高体温が続く場合は、自己判断で薬を飲む前に、まず冷却や水分補給を優先し、必要に応じて医療機関の判断を仰ぐことが望ましい対応です。

似ている症状との区別に注意

熱中症の症状は、他の疾患と似ている場合があり、誤認による対応の遅れが重症化の一因となることもあります。例えば、頭痛や吐き気は風邪や胃腸炎と共通しており、意識障害やふらつきは脳梗塞の初期症状とも似ています。また、高齢者の場合、熱中症による認知機能の低下を認知症の進行と混同してしまうこともあります。

「高温多湿の場所に長時間いた」、「十分に水分をとっていない」など、状況の背景と症状を照らし合わせて判断することが重要です。暑い場所で体調不良を感じた場合は、まず熱中症を疑い、必要な対応を速やかに取ることが大切です。