血液透析を受けている方、あるいはこれから透析が必要になるかもしれない方にとって、「シャント」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。 シャント(正式には「バスキュラーアクセス」)は、透析治療において必要不可欠な“命の通り道”です。
しかし、その仕組みや管理、トラブル対応について詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。
この記事では、透析を安全に、長く続けるために欠かせない「シャント」について、初めての方にもわかりやすく解説します。
シャント(バスキュラーアクセス)とは?
血液透析では、1分間に約200mlという大量の血液を体外に取り出し、ダイアライザーを通して老廃物や余分な水分の除去をした後、体内に戻す必要があります。 そのためには、通常の静脈では不十分であり、動脈と静脈をつなぎ合わせる「シャント(バスキュラーアクセス)」を作成し、十分な血流を確保する必要があります。
シャントは、透析を受ける患者さんにとって“命綱”ともいえる存在です。 毎回、安定した透析を開始するために、十分な血流のある穿刺しやすいシャントを維持しておくことが重要です。
シャントの種類
シャントには大きく分けて、以下の3つの方法があります。
1. 自己血管シャント(AVF:動静脈瘻)
ご自身の血管(動脈と静脈)を直接つなぎ合わせる方法です。 動脈静脈ともに血管径が十分ある方に適しており、感染のリスクが低く、長持ちするのが特長です。通常、前腕部や肘部などに作成されます。
2. 人工血管シャント(AVG:人工血管移植)
表在静脈が十分でない場合などに使用されます。 自己血管の間に人工血管(主にe-PTFEまたはポリウレタン)を挿入して血流経路を確保します。感染や血栓などのリスクがやや高いため、注意深い管理が必要です。
3. 長期留置カテーテル(内頸静脈)
何らかの理由でシャント作成が難しい場合、首の付け根の太い静脈にカテーテルを留置して透析を行う方法です。
通常のシャント作成が困難な場合には、深部にある動脈を皮膚の近くに移動させる「動脈表在化」という手術を行うことがあります。
シャントに起こりやすいトラブルと対応
シャントは毎回の透析で使用するため、どうしてもトラブルが起こりやすくなります。最も多いのが「狭窄(血管の通り道が狭くなること)」です。
感染
毎回の穿刺によって皮膚バリアが破れるため、穿刺部位やシャント周囲は細菌に感染しやすい状態になります。赤み・腫れ・熱感・痛み・膿の排出といった局所的な症状に加え、発熱や倦怠感などの全身症状が現れることもあります。そのまま放置すると、シャントが使えなくなったり、敗血症(全身への感染)に進行する危険もあるため注意が必要です。軽度であれば抗菌薬による治療が行われますが、重症化した場合は切開による膿の排出やシャントの再建が必要になることも。日頃からの清潔な管理(洗浄・乾燥・観察)と、異変に気づいた際の早めの相談が、感染予防のポイントです。
狭窄(きょうさく)
シャントの血流が低下すると、十分な透析が行えなくなる可能性があります。特に糖尿病のある方や高齢の方に多く見られる傾向があります。そのまま放置すれば、やがて血管が完全に詰まる「閉塞」に至るリスクもあります。
狭窄への治療法には、狭窄部分にカテーテルを挿入し、風船(バルーン)で血管を拡張する、PTA(経皮的血管拡張術)があります。外来や日帰りでできるケースが多く、再狭窄を防ぐためにも早期対応が重要です。 閉塞してしまった場合、PTAで再開通できる場合もありますが、場合によっては外科的手術(皮膚を切開して血栓を除去)が必要になることもあります。
シャントのセルフチェックと予防のポイント
シャントの状態は、患者さんご自身でも日々確認することが大切です。シャント音(ザーッという音)に変化がないか?腫れや赤み、熱感がないか?出血しやすくなっていないか?針を刺した後の痛みや内出血が目立たないか? などを確認し、少しでも異変を感じた場合は、すぐに医療機関へ相談してください。
当院のシャント対応について
土浦ベリルクリニックでは、VAIVT(透析バスキュラーアクセスインターベンション)認定専門医が常勤で勤務しており、急なアクセルトラブルに対しても迅速な対応が可能です。また、バスキュラーアクセスに精通した専任の看護師が定期的に血管エコーでシャント狭窄の有無をチェックするシステムが確立しており、完全閉塞を未然に防ぐ体制が整っております。
加えて、他医療機関と連携した外科手術のご紹介もスムーズなため、新規作成の相談から術後のケア、管理まで総合的に対応しています。
シャントは透析患者さんの“生命線”
シャントは、透析治療を支える非常に重要な存在です。状態を良好に保つことで、安定した透析と日々の生活の安心が得られます。
土浦ベリルクリニックでは、シャント作成やトラブル対応を含め、患者さんの「透析生活を守る」医療体制を整えています。 シャント音が弱くなった、聞こえない、穿刺部に腫れや内出血があるなど、シャントに不安がある方や、定期的なチェックをご希望の方は、ぜひお気軽にご相談ください。